自宅の庭にある百日紅が、綺麗な花をつけました。
松谷のエッセイにも登場する百日紅。その一節をご紹介します。
“幼い日、ねえやさんに頭を洗ってもらいながら、人身御供の話を聞いた。洗い終わると「おたばこぼん」ふうに、髪をとって赤いひもで結んでくれた。
白羽の矢が立った娘はね、白木の箱に入れられて人身御供になるの。
怖くてふるえてくるようなのに、聞いた話はそのまま遊びになった。近所の子を集める。私は百日紅の木にのぼって白羽の矢がいつ立つかと胸をときめかせた。幼い子にものぼれるように百日紅はすべすべとして、すこしななめに枝を出していてくれた。
幼い日の百日紅のある風景である。”
(『松谷みよ子全エッセイ3 出会いのとき』より引用)