『龍の子太郎』(講談社刊)
母龍に会いに行くと出かける太郎ですが、天狗に力を借りたり、知恵で黒鬼を退治したり、騙されて鶏長者の手伝いをしたり、魔物に殺されそうになった時、あやに救われたり・・・・。出会いにたすけられ、知恵を絞り、また、騙されても一生懸命に取り組んで、それが、また多くの人に役に立ったり、命を落としそうな時に奇跡が起きたり・・・・。身近な話、壮大な話に引き込まれながら、読む子供たちは、太郎と一緒に冒険をしてゆきます。
私の生き方の基本に、この龍の子太郎が反映している気がしてなりません。
時々自分の人生を振り返り、何か龍の子太郎みたいだな、と思う事がしばしばありました。「物語」をそうして楽しんで読んでいくうちに、見えない何かが身について、様々な事を乗り越えていたりします。物語の力ですね。
さて、実は太郎三部作といわれるあと二つの物語があります。『まえがみ太郎』と『ちびっこ太郎』です。この作品群も日本の昔話を素材にしながら組み立ててゆき、太郎と共に壮大な冒険を繰り広げてゆきます。読みながら、とてつもなく大きな世界に引き込まれながら、日本各地に語り伝えられてきた「昔話」がどれだけ、いとしく、また深いものなのかも気づかされます。
文 瀬川たくみ