母からは、小さい頃から「漫画を読んじゃダメ」と育てられ、私は今でも漫画の読み方が出来ません。つまり、絵を追っていくという見方ができないので、買ったことが無いのです。思春期になれば、「週刊誌と雑誌もダメ」と言われ、20歳を超えて初めて買う女性雑誌はドキドキしながら買いました。けれど、金額が高いのに、読むところが少しでもったいなく、その後あまり買いませんでした。ところが、今気が付くと、この国は漫画と雑誌と、それに加えてゲームに溢れている。高度成長期以降のスピードの速い時代ではなく、その前の、のんびり、ゆったりした時代を経験できた50代半ばの私は、母の育て方に感謝したりしています。母は、高度成長期以前の昭和30年代に流行ったピヨピヨサンダルでさえ、「人の真似をするな」と流行を追わせない人でしたから。
日本人全体が、このスピード社会というレールから降りて、少しのんびりすれば、心豊かな時代に戻れるのではないかなと思います。頭の回転は速くなっていても、吟味する、思考するという部分が欠落すると、人間らしさが失われる。本屋さんに、日本の古典や、夏目漱石あたりに至る本が全然置かれないようになり、物語力(想像力)を身につける機会がどんどん失われている気がします。
この「物語の部屋」等では、作品とその頃の思い出を交えて、載せていきたいと思います。
文 瀬川たくみ