採訪とは、聴き手が全国を廻り、語り手の話を実際に聴きながらノートに写していく作業でした。
話を聴かせてくれると言えば、どこへでも飛んでゆき、直に話を聴き出しました。昭和30年頃は、日本中にそういった語り手たちが、つまりは、柳田國男でいえば「ケ」(日常)の中に「じっちゃ」「ばっちゃ」の昔話があり、孫たちはそうした昔話の中で育っていったという時代でした。今となっては、とても贅沢に思われる時間の過ごし方です。その中で、良いこと、悪いこと、気をつけること、自然への畏敬の念が身についていったのだろうと思われます。そうした「じっちゃ」「ばっちゃ」の昔話を採集するため、訪問を精力的に始めたのが父・瀬川拓男と母・松谷みよ子です。ここから、「採訪」という名称が生まれています。
文 瀬川たくみ